小説

「スピリチュアルに覚醒した私」関 カオル 著


2017年に僕が体験した出来事・・

あまりにも不思議な話しばかりなので、

物語として書き綴っています。

事実は小説よりも奇なり・・という言葉がありますが、

本物のスピリチュアルの世界は、

多くの不思議な出来事で満ち溢れています。




「パトリシア」

2016年、ここシドニーで

僕は、自分の過去生の除霊をやっていた。

信じられるだろうか?

ここは、日本から遠く離れた土地なのに、

サムライの魂の癒やしをするなんて、

全くしてクレイジーな話だった。

 
2010年に、ホメオパシーと呼ばれる自然療法で、

慢性の不安症を治療していたところ、

予期もせずに「魂の目覚め」が起こった。

2010年~2014年までは、本当に苦難の連続だった。
 
そんな時、クンダリーニヨガの先生、

グルデヴィに導かれる様に出会った。
 
僕は、ヨガの個人レッスンを受けるため、

月に一度、先生のスタジオに通っていた。
 
クンダリーニヨガのクリアをすると、

想像を絶するほど激しくエネルギーが動き、

僕は、いつも絶叫しては、号泣していた。
 
レッスンが終わると、自力で起き上がるのが難しいほど、

性も根も尽き果て、くたくたになっていた。
 
電車を乗り継ぎ、ハーバー・ブリッジを渡り、

一時間ほどかけてシドニー郊外の自宅へ戻る。
 
ヨガの帰り道、家の近所で、一人の女性と、

ばったり出くわすことが多くなった。
 
彼女の名は、パトリシア。
 
いつも黒い服を身にまとい、つばの長い帽子をかぶり、

そしてサングラスをかけていた。
 
彼女の体は引き締まり、がっしりとした体格をしていた。

年齢は・・・僕と同じくらいだと思う。
 
とても気さくなオージ女性で、

初対面の僕とも臆せず陽気に話かけてくる。
 
天気のこと、子供のこと、他愛のない世間話を続け、
 
「じゃあね、カオル!シーユー」と言ってその場で別れる。
 
不思議なのだけれども、ヨガの稽古の帰り道、

必ずといっていいほど、毎回、彼女と道端でばったりと出会うのだ。
 

道場に通っていると、僕に教えくれた。
 
”ドウジョウ”という言葉が、
 
オージー女性の口から出てくるとは思いもせず、僕は驚いた。
 
なんでも、小学生の息子に武術を始めさせようと、
 
近所にみつけた柔術の道場を数回訪問したところ、
 
彼女が武術に興味を持ち、のめり込んでしまったと、教えてくれた。
 
「まさか、私が武術をやるなんて思うもしなかったわ!」
 
「私ね、とにかく強いのよ、道場に入って稽古試合が始まると、体がね、体が…」
 
「体がどうしたの?」と僕は尋ねた。
 
「聞いてくれる?ほんとに、驚きだけど、信じられないと思うけど、
 
体が勝手に動き始めるのよ!」と彼女は言った。
 
「え?」僕は、心の中で苦笑した。

勝手に体が動くのは、僕も同じだ。
 
ヨガの激しいクリアを行っていると、

だんだんと気が遠くなり、僕ではない、
 
怒りを抱えた別のエネルギーが腹の底から現れる。
 
それは、サムライの魂だった。
 
激しいクリアをすると、僕の意識は朦朧とし、

次第にトランス状態に入る。
 
すると、サムライが僕の肉体を乗っ取り、

怒りと、苦しみと、悲しみを、僕の体を使い表現していたのだ。
 
パトリシアの話は、僕がヨガのクリアの最中に

体験していることとそっくりだった。
 
彼女は、僕と同じアパートの別棟に住んでいることを教えてくれた。
 
彼女の小学生の息子と、僕の娘のチーちゃんが同い年で、

同じクラスだと聞いて驚いた。
 

ただの偶然なのだろうと思っていた。


 


あるとき、小学校で遠足があった。
 
子供たちの乗ったバスが午後3時に学校に到着する予定だ。
 
僕は、到着時間に間に合うように娘のチーちゃんを迎えに行った。
 
学校の正門は、子供たちを迎えに来たアジア系の両親達でごった返し、
 
子供たちの乗った大型バスが戻ってくるのを、いまか、いまかと待っていた。
 
僕が住んでいるシドニーの郊外の街には、

教育に熱心なアジア系の人達が沢山住んでいる。
 
だから、周囲からは、英語よりも中国語の会話がよく聞こえてくる。
 
スマホに学校からメッセージが入った。

“バスの到着が遅れます”とのことだ。
 
どこかに腰を下ろす場所を探そうと、

正門をくぐり抜け、構内の片隅にベンチを見つけた。
 
長細いコンクリートのベンチには既に数人が座っていたが、
 
隅に少しスペースがあったので、そこに腰かけた。
 
隣に座っている女性は、元気よくアジア系の友人達と楽しそうに、

世間話をしている。
 
その声は…もしかして、パトリシア?と
 
僕は思い隣の女性を見ると、やはり彼女だった。
 
「ハーイ、カオル!」と彼女は元気よく話しかけてきた。
 
お喋りの大好きな彼女は、次から次へと、
 
とりとめのない話を僕にした。
 
イタリアに住んでいる叔母さんが最近他界した話、
 
そのおかげで、ちょっとした遺産を譲り受けた話。
 
「まとまったお金が入ってきて私ってラッキーよね!」
 
「将来はね、親のいない子供たちの為に、学校を作るのが夢なの」と、
 
その情熱を身振り手振りで教えてくれた。
 
パトリシアが話す英語は、オージー訛が強く、とても早口だ。
 
おまけに、いつも興奮気味だから彼女の話を理解しようと、僕は必死だった。
 
彼女が通っている道場での出来事を僕に話をしてくれた。
 
「カオル聞いてくれる?

つい先週、練習試合があってね。信じられないことがあったの」
 
「どうしたの?」と僕は訪ねた。
 
「試合の相手は身長2m程の大男で黒帯よ、私はまだ白帯で、
 
試合開始前には、カラダが震えるほど緊張しちゃって、

でも、試合が始まったら、マスターがやってきて、
 
私にいろいろと教えてくれるの、
 
もっと、腰を下ろしてとか、もう少し待ったほうがいいとか、
 
ここで、打ち込めとか、

それでね、気がついたら、黒帯の大男を倒していたのよ!
 
私にも分からないわよ、何がどうなっちゃてるのか、
 
その場にいた人達もびっくりよ!」と彼女は言った。
 
僕も、彼女の話に驚いた。
 
「ところで?マスターって誰のこと?」と僕は、訪ねた。
 
「聞こえるのよ、」と彼女は言葉を濁した。
 
僕は、もしかして…と思った。
 
こんな事を聞いたら変かなと思い、少し躊躇した。
 
でも、思い切って、尋ねてみることにした。
 
「パトリシア、もしかして、君ってスピリチャルな人かい?」
 
遠くから複数の大型バスのエンジン音が聞こえてきた。
 
どうやら、遠足帰りの大型バスが到着したようだ。
 
出迎えに来た沢山の親が、学校の正門の駐車場に移動しはじめた。
 
「そう、そうなのよ!」

と彼女は、僕の言葉を待っていたかの様に、
 
目を輝かせて答えた。
 
どうやら、彼女も僕がスピリチャルな人だと

ずっと感じていたけれど、
 
言い出すことが出来なかったみたいなのだ。
 
2つのサムライの魂の流れが合流した瞬断だった。
 
僕たちは、シドニー郊外のこの土地で出会うべきことになっていたのだ!

・・続く・・

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