“お前が剣を振り下ろす時、誰が振り下ろしているのだ?”
“龍一!もう一度聞くぞ・・誰が病人を施術しておるんじゃ?”
“誰が、やっているのだ?”
「誰が・・やっているのか・・」龍一は、爺さんの言葉を反芻した。
「いつか、通った道・・」と龍一は、思った。
龍一は、ゆっくりとスサノオの剣を引き上げた。
剣の先端からは、妖艶な糸がひいている様に見える。
彼は、剣をただ構えているのではない。
宇宙の流れの中で構えている、
宇宙の進化の流れの中で、起こっている。
動作に一切の無駄がなく、
完璧であり、
すみずみまで、周到に準備され、
緻密に作り上げられた世界であり、
そこには、調和があり、
静寂があった
道場に、龍一は存在しなかった、
“存在”しなかった
すべては、慈愛の中で完璧に
樹々が呼吸をするかのように、
自然の営みとして、剣を振りかざしている。
いつの日かと、爺さんと一緒に夢見た、
「愛と調和の世界」がそこにあった。
龍一の頬にひとすじの涙がながれた。
彼の全身から力が抜け、宇宙と一体になった。
自分と・・本当の自分と一緒になった。
ビリビリと体全身が痺れてきた。
龍一は微笑みを浮かべた。
「なので、あれば・・」と、スサノオの剣を迷いもなく、振り下ろした。
剣は完璧な弧を描き、銀色の龍と黒龍の頭蓋をまっぷたつに斬った。
すると、卑弥呼の黒い涙から生まれた黒龍、
その斬られた黒龍の中から、虹色の龍が現れた。
虹色の龍は、ヒムカと出雲の神々の間を駆け抜け、頭上をぐるりと旋回した。
“我は、神なり・・龍神なり・・”
“なぜこの様なことをなさるのか?”と虹色の龍は神々に問うた。
“我等、神とて、不自由な身・・” と神々は答えた。
“もう、無駄な争いは、やめられてはどうか?”と虹色の龍は神々に詰問した。
“・・カリユガの時代が終わったので、同意しても良い・・”と神々は答えた。
“神とは、まことに気まぐれじゃ存在じゃ”と龍一は笑った。
以来、出雲の神々と日向の神々の“和”の象徴である、虹色の龍は、
天皇家の化身として、この国を支えることになった。
いまこそ、大和の地に、「愛と調和の国」ユートピアを築く時がやってきたと、
どこからか声が聞こえる。
時代は流れ、わたしたちの心の奥底に眠っていた記憶が、いま蘇った。

