シリウス

シリウス「時の旅人」第4章

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ジョンの講義には、始まりがなく終わりがない。まるで、宇宙だ。

次から次へと話題が変わり、

講義はまるで神の調和の中で息吹く新緑の様に自然に流れてゆく。

講義の内容は宇宙の意識の進化の話題へと変わった。

宇宙は、何十万年もの周期的なサイクルの中で進化していると、

カリユガとサティユガという時代、

つまり、カルマの重い時代と軽い時代が交互に繰り返しているという話だ。

ジョンの教えの真骨頂は、カルマについて教えだった。

カルマは、人生の宿題だと言った、人の肉体はカルマの塊だと教えてくれた。

肉体にはカルマがあり、魂にもカルマがあった。

一般的にカルマが悪いものだと考えているが、決してそうではない。

魂と神と自分との合意のもと、今生で昇華するべきカルマの量を決め、

この地球に私達はやってきたのだ。

「カルマは、宇宙を進化させる燃料だ」とジョンは言った。

僕も、全く同感だった。

カルマとダルマの教えについて、

ジョンの右に出るものは誰もいないだろう、と僕は思った。

叡智は、私達の中にある。

本当は、私達は、あっけにとられるほど、

簡単で容易にその叡智にアクセスすることができると言う。

実際、この宇宙には我々の想像をも遥かに超える、知性体達が存在する。

でも、その宇宙の叡智にアクセスする為には、

自分の小さな肉体に留まるのではなく、

意識を、空(くう)と呼ばれる、何もなく、

そして、無限の領域に踏み込まなければならない。

僕は、ジョンの講義を全身全霊で食い入る様に聞き入り、

その豊富な知識とスケールの大きさに、僕は完全に魅了された。

講義の内容が不自然なほど、僕の魂が知りたいと思っていたことと、

ピッタリと合致したに驚いた。

ジョンこそは、この地球で唯一、

宇宙の真理をアクセスできる先生だと僕は確信した。

その日の講義が終わり、

ジョンは、僕とキャシーをカムリに乗せ、ホテルへと向かった。

途中キャシーの住んでいるアパートに立ち寄り、彼女を先に降ろした。

玄関先に立ち、笑顔で手を振っている彼女にジョンはウインクした。

ジョンがアクセルを軽く踏み込むと、

カムリのエンジンが、ブウンと軽快な羽音をあげた。

しばらくすると、ジョンが言った。

「いい子だろう?」

「えっ?」

「彼女だよ?」

「手を出すとまずいよね?」

「生徒に迷惑がかかるだろうし、SGMグループをダメにしたくないからね」とジョンは、続けた。

何かの冗談だろうと僕は思い僕は、

「別にいいんじゃない?」とおどけながら答えた。

まさか、宇宙の叡智にアクセスできる瞑想会の先生が、

教え子に手を出すことはないだろうと思った。

「観音堂」

今、思い返しても、ジョンと過ごした一週間は特別な時間だったと思う。

ある時、僕たち3人は、ジョンの運転するカムリで、隣街にある寺院に向かった。

それは、観音様の祀られている由緒正しいお寺だった。

ここの観音様は、何でも願いごとを叶えてくれるんだ、

とジョンは意味深げに言った。

そして、不思議な話をしてくれた。

ある時、ジョンの友人の1人が病に倒れ、

医師から余命3ヶ月だと告げられていた。

ジョンと彼女の家族は、彼女の為に連日祈りを捧げた。

だが、彼女の病状が改善することはなかった。

ジョンは何か彼女の為に出来ることはないかと、観音様の寺院に向かった。

門を叩くと、タイの僧侶が現れた。

ジョンの表情をチラリとみると、何かお悩みがあるのですね…?と尋ねた。

「実は、知り合いが不治の病でして…」とジョン。

「簡単ですよ、何か好きなものを諦ることは出来ますか?たとえば、好きな食べ物とか」と僧侶は言った。

「そうだね、豚肉とかどうだい?」ジョンは答えた。

「それで、大丈夫ですよ」と僧侶は答えた。

「今日から、豚肉は一切口にしないから、ご病気の友人の命が助かりますようにと、観音様のお願いしてごらんなさい・・」

「わかりました」とジョンは答えた。

その日を堺に、ジョンは豚肉を一切口にしなくなり、

余命3ヶ月と宣告された知人は奇跡的な回復を遂げた。

観音様の寺院へ向かう道中、

助手席の窓から、流れるチェンマイのどかな風景を見ながら、

僕は、ひとつ悩んでいたことがあった。

これは、ジョンに伝えるべきなのか?

どうしよう?と迷っていた。

でも、彼に伝えようと思い、わざわざチェンマイまでやってきたのも事実だ。

それは、僕のダークサイドとの契約についてだった。

サイキックのアブドルとの

激しいヒーリングと霊視セッションの中で、

僕にはダークサイドとの契約があり

7回の人生で死ななかったことを知った。

クンダリーニヨガのクリアで、サムライだった頃の過去生の浄化を、

激しくやっていたので、

7回の人生で死ななかったことは、とても腑に落ちる内容だった。

僕は、ハンドルを握るジョンの横顔をチラリと見ながら、

鉛の様に重い口を開いた。

「ジョン、実は…」と絞り出す様に話しかけた。

すると、突然、ジョンが、

思いっきりブレーキを踏んだ。

「キャー!」と後部座席のキャシーは悲鳴を上げ、

タイヤが道路の表面に擦れ“キーッ”と大きな音がし、

僕達は、体が前方向につんのめり、カムリは急停車した。

車の前には観光客らしい2人の女性が、

こともあろうに2車線の道路のど真ん中で地図を開き立っていたのだ。

彼女達も、驚いたらしく僕たちのことを怯える様に見ていた。

「まったく、中国人観光客はこれだからな!」とジョンは言った。

なんでも、チェンマンには沢山の中国人観光客が連日押し寄せていて、

彼等は全然交通ルールを守らないと、文句を言っていた。

僕は突然の出来事に呆然としていた。

ああ、なんてこった。

ダークサイドの契約の話を伝えるタイミングを失ってしまった…

と僕は思った。

観音様の祀られている寺院の敷地は、

想像していた以上に大きく、そして、色褪せていた。

寺院を維持するための予算が不足しているのか、

ところどころペンキが剥げ、みすぼらしい感じがした。

庭には、見上げるほどの大きな観音様が祀られていた。

通路には、七福神の1人である、

布袋さんが描かられている大きな絵画があり、

ジョンは逸話を教えてくれた。

“神様の晩餐会に招待された布袋さんは、

いつも宴の最中はウトウトと居眠りし、

宴の終わりになると目を覚ます。

そして、残りモノの食べ物を袋に詰めていた。

周りの神様連中は、彼は一体何者だい?とヒソヒソ話をしていた。

布袋さんは、実は、袋に詰めた食べ物を、

貧しい人々に配り、福を分け与えていた。“

布袋さんは、後に自分をマートレイヤつまり、弥勒菩薩の化身だと

自らの正体を他の神々に明かしたという。

僕たちは、お寺の境内にめぐらされた、

小道を矢印の順路の通りに進んだ。

観音様の銅像の前に到着すると、線香に火をつけてお参りをした。

ジョンは、お経を唱えながら、うやうやしくお祈りをした。

「何のお願いをしたのですか?」と僕が尋ねると

「カオルの次の仕事が見つかりますように…」と、お願いしたと教えてくれた。

僕は、3ヶ月程前に16年間勤務したITの仕事を退職したばかりで、

次の仕事を探している最中だった。

瞑想の大家である先生が、

僕の為にお祈りをしてくれるなんて、とても嬉しく思った。

僕達は、お寺の入口にある、砂利道に止めた車に戻った。

由緒あるお寺だと聞いていたのに寺院は色褪せていて、

みすぼらしかったし、なんだか肩透かしを食らった気がした。

ジョンの運転する車は、チェンマイの街の渋滞に飲み込まれた。

窓の外には街の混沌とした風景が広がり、

車の中に流れ込んでくる空気は、湿度が高く熱気を帯びていた。

道路の脇には、電線がスパゲティの様に絡まった電柱が、

その重みに耐えながら、アンバランスな姿勢で道路脇に立っている。

助手席に座り、チェンマイの雑多な街並みを眺めていると、

そこには沢山の人々の日常と、人生が広がっていた。

そんな世界をなにげなく覗いていると、

自分の心に小さな隙間が出来た様な気がした。

その隙間がどんどんと大きくなり、

僕のハートも一緒に広がっていくのを感じた。

それは、慈愛だった。

観音様の圧倒的な慈愛だった。

「去年の洪水で街が水浸しになって…」とジョンが話を始めたが、

僕の耳には入らなかった。

観音様の慈愛は、世界中の人々を、どんな境遇にある人々にも、

あまねく平等に救いの手を差し伸べる様に、僕たちを包み込んでいた。

まるで、太陽の光の様に、平等に人々に救いの手を差し伸べているのだ。

観音様の慈悲。

言葉では、聞いたことはあったけど、

実際に観音様の慈悲を体感すると、

その慈愛の持っている膨大な愛のエネルギーは全てを凌駕していた。

この観音様の慈愛を一度でも体験すると、

もう、2度と同じ自分でいることの出来ない、

それほどまでに、変容の力を持つ、観音様の慈愛なのだ。

アッセンデット・マスター達は、この様に世界を支え、

人類を癒やしに導いているのだろうと思った。

「ほらっ、あそこのビルの2階、窓の下に泥の痕跡があるだろう?

洪水の水はここまで上がってきたんだなあ…」とジョンの話は続いていた。

「ボーンナイフ」

ジョンの講義も最終日に近づいた。

僕には、まだ片付けないといけない問題があった。

実は、前回の講義の最中に、自分の中にいる別の存在が、

激しく動き、思わず「ウオーッ」と大絶叫してしまったのだ。

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シリウス「時の旅人」第3章 チェンマイに来る前に、1人のSGMグループの先生と話をする機会があった。 「あの人のところには、絶対行っちゃだめ...

ホメオパシーでスピリチュアルに覚醒した私

オーストラリア在住21年の筆者が、自然療法であるホメオパシーでパニック発作を治療したところ、苦難の末、壮大な一瞥体験をし、2015年にスピリチュアルに覚醒した体験記。

”冗談だろう? 人生って、ジョークだったのか? あまりの可笑しさに、僕は笑いが込み上げてきた。 僕たちは、人生というドラマの傍観者だったのだ。でも、そこには愛が満ち溢れている。 いや、どこもかしこも、愛でギッチリ溢れているのだ。” 〜本文より〜

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